ドラマ「アイシテル」と五味康祐

日本テレビのドラマ「アイシテル」が終わりました。

小学5年生の少年が、小学2年生の少年を殺害してしまうという衝撃的なストーリでした。

このドラマのテーマの一つは「心の平安が永遠に来ることのない人生の酷さ」です。

加害者側、被害者側のどちらにも心が安らぐことはこの先永遠にないのです。

その意味で「すべての母親に捧げる」というキャッチフレーズは軽すぎるのではないでしょうか。

そんな不満を感じると同時に、ふと、この本を思い出しました。



五味康祐は「柳生武芸帳」「剣法奥儀」などの時代小説で知られる作家ですが、実はドラマ「アイシテル」とよく似た経歴の持ち主なのです。

昭和40年7月24日のことです。

午後10時50分、当時43歳だった五味康祐は、59年型ポンティアックに妻、子供、姪夫婦の4人を乗せて妻の実家、尼崎に向かう途中、名古屋市瑞穂区堀田通9の、名鉄堀田駅すぐ南の国道1号線から分かれて名古屋の中心街に入る広い道路を渡ろうとしていた60歳の女性と6歳の息子を跳ねて死亡させてしまったのです。

五味がクーラーのスイッチを入れようと下を向いた瞬間の出来事でした。

時速60キロ(制限速度15キロオーバー)出ていたこともあり、母親の女性は16メートル、少年は21メートルも跳ね飛ばされていました。

その事故以降の彼の悔恨と懺悔の人生がちょうどこのドラマと重なってしまうのです。

五味康祐は作家であると同時にオーディオの大家でもあったのですが、彼の音楽に関する著書に「巡礼」や「遍歴」などというタイトルが付いているのはそういう経緯があるからです。

彼はベートーベンに魂の救済を求めます。

この「五味康祐オーディオ巡礼」以外に、「天の聲―西方の音」「五味康祐 オーディオ遍歴」などの音楽エッセイがありますが、どれもプロの音楽評論家が書いたものとは一線を画す迫力があります。

ドラマ「アイシテル」はフィクションです。

でも、大きくなった野口智也が救いを求めてベートーベンに聴き入っている、そんな光景をつい想像してしまうのです。

第1話 すべての母親へ捧ぐ家族愛の物語 2009年4月15日 13.2%
第2話 禁断の葬儀 2009年4月22日 13.7%
第3話 告白…少年の殺意 2009年4月29日 14.2%
第4話 被害者家族への手紙 2009年5月06日 13.0%
第5話 意外な真相…息子の秘密 2009年5月13日 14.8%
第6話 生きてこその償い 2009年5月20日 13.9%
第7話 僕は死刑になるの? 2009年5月27日 14.0%
第8話 審判の日、全ての真 2009年6月3日 15.6%
第9話 母と母、衝撃の対面 2009年6月10日 16.6%
第10話(最終話)2つの家族…それぞれの結末 2009年6月17日 18.6%

平均視聴率・14.76%(ビデオリサーチ調べ・関東地区)

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