「焼き場に立つ少年」

原爆が投下された長崎市の浦上川周辺の焼き場で、亡くなった弟を背負い、直立不動で火葬の順番を待っている少年の写真 「焼き場に10歳くらいの少年がやってきた。小さな体はやせ細り、ぼろぼろの服を着てはだしだった。少年の背中には2歳にもならない幼い男の子がくくりつけられていた。その子はまるで眠っているようで見たところ体のどこにも火傷の跡は見当たらない。少年は焼き場のふちまで進むとそこで立ち止まる。わき上がる熱風にも動じない。係員は背中の幼児を下ろし、足下の燃えさかる火の上に乗せた。(略)私は彼から目をそらすことができなかった。少年は気を付けの姿勢で、じっと前を見つづけた。私はカメラのファインダーを通して涙も出ないほどの悲しみに打ちひしがれた顔を見守った。私は彼の肩を抱いてやりたかった。しかし声をかけることができないまま、もう一度シャッターを切った。急に彼は回れ右をすると背筋をぴんと張り、まっすぐ前を見て歩み去った。」
(ジョー・オダネル「トランクの中の日本―米従軍カメラマンの非公式記録」より)

戦後、アメリカに帰ったオダネル氏は、手を尽くして写真の少年を探し続けましたが、とうとうその消息は分かりませんでした。

トランクの中の日本―米従軍カメラマンの非公式記録
小学館
Joe O’Donnell(原著)
発売日:1995-05
発送時期:在庫あり。
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おすすめ度:4.5
おすすめ度3 印象深い作品
おすすめ度5 そこにいる人たち
おすすめ度5 戦後の日本、今の日本
おすすめ度5 一枚の写真から得られる情報の多さが気持ちいい。
おすすめ度5 「焼き場に立つ少年」この1枚の写真のためだけでもこの本を購入する価値があります。

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