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飛び石 その2


オランダのある町がごみの問題に悩んでいた。

かつて清潔だったある区域が、人びとがくず入れを使わなくなったために、見苦しくなってしまったのだ。

タバコの吸い殻、ビールの空き缶、チョコレートの包み紙、新聞などのごみが通りに散らかっていた。

当然、清掃課は事態を憂慮して、街を清潔にする方法を考えた。

ひとつのアイデアは、ごみを散らかしたときの罰金を二倍にして、違反1件あたり25ギルダーから50ギルダーにすることだった。

実際に試してもみたが、ほとんど効果がなかった。

もうひとつの方法は、この地域を巡視するごみ捨て取締官の数を増やすことだった。

これもまた、似たりよったりの、つまり、「ごみを捨てる人を罰する」解決策で、効果はほとんど認められなかった。

あるとき、誰かがつぎのような質問をした。

「人びとがくず入れにごみを入れると、くず入れがその人たちにお金を払うとしたら、どうなる? 各くず入れに電子工学的な感知装置と、硬貨を払い戻す装置をつければいい。ごみをくず入れに入れた人には、10ギルダー払うことにしよう。」

このアイデアは、少なくとも、全員の思考にガツンと一撃を与えた。

「もしこうならば、どうだろう」と尋ねた人は、事態を「ごみを散らかす者は罰せよ」という問題から、「法に従う者に報いよ」という問題に変えたのである。

しかしながら、このアイデアには、ひとつ重大な欠点があった。

もし市当局がこのアイデアを実行すれば、破産はまぬがれない。

さいわい、このアイデアを聞いていた人たちは、それを実現性の面で評価しなかった。

むしろ、それを飛び石にして、自問した。

「ごみをくず入れに入れた人に報いるには、ほかにどんな方法があるだろうか?」

この質問は次の解決策を導き出した。

清掃課が開発した電子工学的なくず入れには、ごみが投げ込まれると、それを感知する装置がついていて、これがテープレコーダーを作動させ、笑い話を聞かせる。

つまり、笑い話をするくず入れというわけだ!

くず入れごとに話す笑い話はいろいろで(下手なだじゃれを言うものがあるかと思えば、とぼけた長話ををするものもあった)、たちまち評判を呼んだ。

笑い話は2週間ごとに変わった。

その結果、人びとはわざわざ立ち止まって、ごみをくず入れに入れるようになり、街は再び清潔になった。

ロジャー・フォン・イーク「頭にガツンと一撃」新潮社より)

飛び石 その1


飛び石とは、それ自体はあまりに突飛で現実的ではないが、別の独創的なアイデアの引き金になるような考えのことを言います。

ある大手の化学会社のエンジニアが、次のような質問をした。

「もし、家屋用のペンキに火薬を混ぜたら、どうなるだろう?」

まわりの人たちは呆気にとられたが、エンジニアは続けた。

ペンキは塗ってから3、4年たつとどうなるか、お気づきですか? 硬くなって、ひびだらけになり、はがすのに大変苦労する。もっといい落とし方があるはずだ。ペンキに火薬を混ぜれば、すぐにも家から吹き飛ばせる。

このエンジニアのアイデアは興味深かったが、ひとつ欠点があった。---あまり現実的とは言えなかった。

しかしながら、彼の話を聞いた人たちの行動は賞賛に値する。

彼のアイデアを実現性では評価しなかったのだが、現実的で独創的なアイデアに導く飛び石にしたのである。

彼らは考えた。

「古いペンキを落とす化学反応を起こすには、ほかにどんな方法があるだろう?」

この質問は彼らの思考に糸口をつけ、やがて、家庭用のペンキに添加物を混ぜるとうアイデアを導いた。

これらの添加物はそれだけでは作用しないが、ペンキが古くなってから、そのうえに、ほかの添加物を含む溶液を塗ると、この時点で、これら二組の添加物の間に反応が起こって、すぐにペンキが剥げる仕組みである。

ロジャー・フォン・イーク「頭にガツンと一撃」新潮社より)

頭のこわばりをほぐす


ロジャー・フォン・イーク「頭にガツンと一撃」新潮社は作家の城山三郎氏が惚れこんだ本で、もとはロジャー・フォン・イークが主宰するセミナーで管理職研修に使われていたテキストでした。

そのセミナーは大変な人気で、参加できないならせめてテキストだけでもという要望が多かったため自家版という形で出したところ、それが奪い合いになり、そしてそのことが話題となって、広く市販されることになるやたちまちベスト・セラーになりました。

中でも目次の章見出しは「頭のこわばりをほぐす10か条」ともいうべきもので、プリントアウトするなどして、常に手元に置いておかれてはいかがでしょう。

頭のこわばりをほぐす10か条

  1. 物事の正解は一つだけではない
  2. 何も論理的でなくてもいい
  3. ルールを無視しよう
  4. 現実的に考えようとするな
  5. 曖昧のままにしておこう
  6. 間違えてもいい
  7. 遊び心は軽薄ではない
  8. 「それは私の専門外だ」というな
  9. 馬鹿なことを考えよう
  10. 「創造力」は誰でも持っている