飛び石とは、それ自体はあまりに突飛で現実的ではないが、別の独創的なアイデアの引き金になるような考えのことを言います。
ある大手の化学会社のエンジニアが、次のような質問をした。
「もし、家屋用のペンキに火薬を混ぜたら、どうなるだろう?」
まわりの人たちは呆気にとられたが、エンジニアは続けた。
ペンキは塗ってから3、4年たつとどうなるか、お気づきですか? 硬くなって、ひびだらけになり、はがすのに大変苦労する。もっといい落とし方があるはずだ。ペンキに火薬を混ぜれば、すぐにも家から吹き飛ばせる。
このエンジニアのアイデアは興味深かったが、ひとつ欠点があった。---あまり現実的とは言えなかった。
しかしながら、彼の話を聞いた人たちの行動は賞賛に値する。
彼のアイデアを実現性では評価しなかったのだが、現実的で独創的なアイデアに導く飛び石にしたのである。
彼らは考えた。
「古いペンキを落とす化学反応を起こすには、ほかにどんな方法があるだろう?」
この質問は彼らの思考に糸口をつけ、やがて、家庭用のペンキに添加物を混ぜるとうアイデアを導いた。
これらの添加物はそれだけでは作用しないが、ペンキが古くなってから、そのうえに、ほかの添加物を含む溶液を塗ると、この時点で、これら二組の添加物の間に反応が起こって、すぐにペンキが剥げる仕組みである。
(ロジャー・フォン・イーク「頭にガツンと一撃」新潮社より)
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